アルフドゥールの誓約(5)
マトルードは、「あなたの詩は、非常に良くできている。だが、あなたがこの主題をもっと適切に表現したならば、詩はさらに素晴らしくなったであろう」、と周囲の人びとから言われた。そこで彼は、「一晩か二晩、時間がほしい」、と答え、二、三日後にさらに次のように詠んだ。
「おお、大いに泣いて、そなたの涙をあふれさせよ、
ムギーラの息子たちのために泣け、あのカアブの高貴な血統のために、
おお、泣きやむな、そなたの涙を集めて、
心から嘆き悲しめ、生涯の不幸の悲しみを。
寛大で信頼される男たちのために泣け、
彼らの贈り物は潤沢で、気前よく、惜しみなかった、
彼らの魂は純正で善意に満ち、
彼らの気質は堅固で、重大事には断固としていた、
非常時に強く、ひるみなく、誰にも頼らなかった、
決断は速く、気前のよさには限りがなかった。
カアブの家系をたどれば、それは鷹、
栄光の的、絶頂に至る、
寛大さと、惜しみのないムッタリブのために泣け、
そなたの涙の泉を解き放て、
今日、ラドマーンで、我らから異邦人として去っていった、
我が心は死んだ彼のために悲嘆に暮れる。
そなたには災いだ、泣きたければ泣け、
カアバの東のアブド・シャムスのために、
彼の遺骸の上をガザの風が吹く。
とりわけ我が友、ナウファルのために泣け、
サルマーンの砂漠に墓を見つけた。
我は彼らのような男たちを見たことがない、アラブの中にも異邦人の中にも、
白いラクダが彼らを乗せて行くとき。
もはや彼らの野営はどこにもない、
我らの隊列の輝きだったものだが。
時が彼らを滅ぼしてしまったのか、それとも彼らの剣が鈍ってしまったのか、
あるいは、生きとし生けるものは運命の餌食にされるのか。
彼らが死んでからというもの、我が満足するのは、
ほほ笑みと友好的な挨拶でしかなくなった。
髪を乱した女たちの父のために泣け、
彼女たちは、死が迫ったラクダのようにベールを外して父のために泣く。
彼女たちはこれまで歩いた者のうちで最も気高い男を悼む、
涙の洪水で彼を追悼する。
人びとは気前がよく寛大な男を悼む、
不正を拒否し、問題を解決した最も偉大な男を。
アムル・アルウラー〔高貴なアムル・ハーシム〕の死期が近づいたとき、
人びとは彼のために泣いた、
彼の優しい気質は、夜の来客を笑顔で迎えた。
人びとは悲嘆にひれ伏して泣いた、
悲嘆と哀悼のなんと長いことよ。
人びとは彼の死から時間が過ぎ去ったとき、彼を惜しんだ、
人びとの顔は、水を取り上げられたラクダのように青ざめた。
運命の一撃の重大さのために。
私は悲嘆にくれ星を眺めながら夜を過ごした、
私は泣き、幼い娘は泣いて悲嘆を分かち合った。
彼らに並び匹敵する王子はいない、
残された人びとのなかで彼らのような者はいない。
彼らは、一族の中で最高の息子たちであった。
困難に直面したとき、彼らは最高の男たちであった。
彼らは、滑らかに速く走る馬をいったい何頭、人に与えたことだろう、
捕獲した雌馬を何頭贈ったことか、
見事に鍛えられたインドの剣をどれだけ、
井戸のつるのように長い槍をいくつ、
求める人たちに何人の奴隷を与えたことか、
贈り物をあまねく惜しみもなく。
私が数えても、そしてほかの者たちが一緒に数えても、
私は彼らの気前のよさを枯渇させられない。
彼らは純血な血統の中で最も優れている、
いかなる者が彼らの祖先を自慢しようとも、
彼らが遺した家の飾り、
だから彼らは孤独で見捨てられた、
私は泣きやまないうちに言おう、
神よ、不幸な(家族を)救い給え、と」。
「髪を乱した女たちの父」、という言葉でこの詩人は、ハーシム・イブン・アブド・マナーフを意味している。
叔父のアルムッタリブの後、アブドゥル・ムッタリブ・イブン・ハーシムは、巡礼者たちに食と水を提供する責務を継承し、彼の一族と共に父祖たちの慣習を実践した。この後彼は、父祖たちの誰も獲得したことのないような高貴さを達成したので、人びとは彼を愛し、彼の名声は偉大となった。