2012年12月15日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(117)

アラブの占い師、ユダヤ教のラビ、キリスト教の修道士らによる神の使徒に関する報告(1)


 アラブの占い師、ユダヤ教のラビ、キリスト教の修道士たちは、神の使徒の使命が始まる前、彼の時代が迫りつつあるとき、神の使徒について既に語っていた。ラビと修道士は、聖書の中に見出し、また彼らの預言者たちが言い残していた、神の使徒と彼の出現の時に関する記述について語った。アラブの占い師は、ジン精霊から派遣された悪魔たちが星を投げつけられるまで天でひそかに盗み聞きしていた話を、彼らのもとに現れた悪魔から伝え聞き、語った。当初、アラブは占い師たちが語ることに全く耳を貸さなかった。しかし占い師たちは、神が使徒を遣わされて、自分たちの語った話が実現していることにアラブが気付くまで、絶えず語り続けていた。使徒の使命が主より下った時、悪魔たちは天で盗み聞きすることを禁じられ、星を投げつけられた。彼らはそれまで聞き取り易い場所を陣取って天の音信を盗み聞きし続けていたが、それ以降できなくなった。精霊たちは、主がなにか重大なことをなされようとするために、悪魔たちにこのような仕打ちをされたことを知っていた。ムハンマドに使徒としての啓示が下された際、主は、精霊たちが天の音信を聞くことを禁じた時のことを彼に語られた。精霊たちは神の使徒の出現について以前より知っており、神が重大なことをなされようとしていることを察知して、今こそ使徒に啓示が下ることを理解した。そして彼らは、神の使徒の言動について一切否定しなかった。「言え、私に啓示が下された。一群のジンが、聞いて言ったことだが、われわれは、じつに驚くべきコーランを聞いたものだ。これこそ正道へ導くもの。われわれはこれを信仰しよう。われらの主にだれかを併置するようなことは断じてしない。われらの主のご威厳はいや高く、主は妻を娶らず、息子も持たれない。われわれの一部には愚か者がいて、神について途方もない話をするものだ。われわれは、人間もジンも、神のことについては、嘘をつくようなことはないと思っていたが、人間の中には、ジンの一部に庇護を求める者さえあって、かえってジンの傲慢さを増長させている。彼らは、おまえたちと同じように、神がだれかをよみがえらせたもうようなことはないと思っていた。われわれが天にふれてみると、それは強力な番人と、光り輝く流星でいっぱいであることがわかった。われわれは、そこに席をとって盗み聞くのが常であったが、今では、そうして聞こうとする者は、光り輝く流星が待ちかまえているのを見るだけだ。われわれには、主が地上の者たちに災難がふりかかるように意図なされているのか、それとも、正道に導きたもうおつもりなのか、全然わからない」(七二章一―一〇節)。コーランを初めて聞いた時、ジンたちは、天の音信を聞くことを禁じられたのは、主の啓示が混乱することなく、唯一、使徒を通じて伝えられるためであったという主の真意を悟った。それで彼らは、使徒が語る啓示を信じ、アッラーへの信仰の道を歩んだ。「(コーランを聞いたジンたちは)仲間のところへ帰っていって警告した。彼らは言った、おお、民よ、われわれは、ムーサ以降に下され、それ以前のものを確証する啓典をたしかに聞いた。それは真理と正しい道に導くものである」(四六章二九、三〇節)。

0 件のコメント:

コメントを投稿