ホムスについて(2)
アラブは、これらの衣服を、「廃棄物」と呼んだ。クライシュはこのような規制を巡礼者に受け入れさせ、アラファで休止させ、そしてそこから退出させてからカアバを裸で回らせた。少なくとも男性は裸でカアバを回り、女性は前あるいは後ろが開いた下着を除いたすべての衣服を脱いでから回った。そこで、カアバを回っていたあるアラブの女性は、次のような詩を詠んだ。
「今日は一部、あるいは全部が見えてしまう、
私が共通の財産にならないなら、何も見られることはないのに」。
聖域の外から入ってきて、普段の衣服でカアバを回った巡礼者たちは、彼ら、あるいはほかの誰もがその衣服を再び使えないように捨てた。あるアラブは、捨ててしまって取り返すことができないが、それでも未練がある衣服について詠んだ。
「私が彼女に二度と戻れないことは嘆かわしい限りだ、
あたかも彼女が巡礼の目の前に捨て去られた禁忌のように」。
すなわち、彼女には触れることができない。
このような状態は、神がムハンマドをお遣わしになって啓示を授け、アッラーへの信仰の法と巡礼の慣習を定められるまで続いた。「それから、みなが駆けおりたところからおまえたちも駆けおりよ。そして神にお赦しを乞え。まことに神は寛容にして慈悲ぶかいお方である」(二章一九九節)。この節はクライシュに呼びかけられており、この節中の「みな」とはアラブを示している。そこで巡礼の戒律では、使徒は彼らをアラファの丘まで駆けあがらせ、そこで停止させ、そしてそこから駆けおろさせた。
聖域の外から神殿内に持ち込まれた食物と衣服の禁制については、主は使徒に以下のように啓示された。「アーダムの子らよ、いかなる礼拝の場でも身なりを端正にせよ。食べよ、そして飲め。しかし、度を超してはならない。神は度を超す者を愛したまわない。言ってやれ、『神が僕たちに出してくださった装身具やおいしい食べ物を禁じたのは、だれなのか』。言ってやれ、『復活の日には、こういうものは、現世の生活で信仰あった人びとだけのものとなる』。このようにわれは、分別ある人たちにしるしを詳しく説明する」(七章三一、三二節)。かくして主は、イスラームと共に主の使徒をお遣わしになったとき、人間の利害に反するクライシュが新たに作り出した規則とホムスの禁制を廃棄なされた。
ウスマーン・イブン・アブー・スライマーン・イブン・ジュバイル・イブン・ムトイムは、伯父のナーフィイ・イブン・ジュバイルがその父ジュバイル・イブン・ムトイムから伝え聞いた次のような話を、アブドッラー・イブン・アブー・バクル・イブン・ムハンマド・イブン・アムル・イブン・ハズムに伝えている。ジュバイルは、「神からの啓示が授けられる以前の神の使徒に私が出会ったとき、なんと使徒は、彼の部族の男たちと共に動物に乗ってアラファで休止し、そして彼らと共にそこから離れた。それは、神が使徒に授けられた特別の恩寵であった」、と語った。
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