2012年11月3日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(110)

アルフィジャール(冒涜)戦争


 この戦争は、使徒が二十歳の時に起きた。二つの部族、キナーナとカイス・アイラーンが、戦いを禁ずる神聖月に戦い、神を冒瀆する行いであったため、そのように呼ばれている。クライシュとキナーナの部族の側の首領は、ハルブ・イブン・ウマイヤ・イブン・アブド・シャムスであった。戦闘の始まりではカイスが優勢だったが、真昼までにキナーナ側が勝利した

 この戦争は西暦五八〇年ころから五九〇年ころにかけて断続的に継続した。マッカとマディーナが位置する南ヒジャーズ地方では、大部族連合のハワーズィンが強大な勢力を持ち、クライシュ族と敵対関係にあった。対立の原因は明らかではないが、クライシュがビザンチン帝国の勢力下にあったシリアと交易し、ハワーズィンはペルシャ帝国の属国だったヒーラのアンヌーマーン・イブヌル・ムンズィルと交易していたことにあったらしい。いずれにせよ、アラビア半島が、東西両超大国の対立に巻き込まれていたのは明らかである。

クライシュと同盟していたキナーナ族が、神聖月に、ハワーズィンの保護下でイラクへの隊商を指揮していたカイス・アイラーンの族長を殺害したことが原因で、血の復讐戦争が始まった。伝承によれば、預言者はおじたちと一緒にこの戦争に参戦した。ハワーズィンは後に、イスラーム軍によって征服されムスリムに改宗した。

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