2012年11月3日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(113)

カアバの再建と使徒による審判(2)


 アブー・ワハブは、使徒の父の母方の大叔父であった。彼は、あるアラブの詩人が称賛した気高い人物である。

 「もし私が我がラクダをアブー・ワハブの門前にひざまずかせれば、

 ラクダは明日にいっぱいになった鞍袋をつけて旅に出よう、

 彼はルアイイ・イブン・ガーリブを父祖とする二つの部族の血を引く、

最も気高い人だった、

 高貴な系譜をたどってみれば。

 不正の受け入れを拒絶し、与えるときには喜んで、

 彼の祖先は最も高貴な血統だった。

 鍋の下には巨大な灰の山ができ、

 彼はお皿を豪勢な肉をのせたパンで満たす」。

 クライシュたちは、仕事を分担し、門に近い区域は、アブド・マナーフの部族とズフラ族に割当てられた。(天使ジブリールがイスマイールに授けたと伝えられる)黒石と南壁の区域は、マフズーム族とクライシュの諸部族に割当てられた。カアバの裏は、アムル・イブン・ホサイス・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの二人の息子を父祖とするジュマハ族とサハム族に、そしてアルヒジュルの区域はアルハティールと呼ばれ、アブドッ・ダール・イブン・クサイイ、アサド・イブヌル・ウッザ・イブン・クサイイ、アディーユ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの各部族に割当てられた。

 人びとは、神殿を解体することを畏れ、そこから退いた。アルワリード・イブヌル・ムギーラは、「私が取り壊しを始めよう」、と言ってつるはしを取って向かい、しばらくの間、「おお、神よ、我々の畏れを取り除きください。おお、神よ、我らは最善のことをなそうとしているだけです」、と唱えた。そして彼は、二つの角の間の一部を壊した。その夜、人びとは、「我らは警戒しよう。もし、彼が災難に襲われるのならば、解体を取りやめ、元の状態に回復しよう。しかし、彼に何も起こらないのならば、神は我らがしていることを喜ばれているのであり、取り壊しを始めよう」、と言って見守った。翌朝、アルワリードが解体作業に戻ったので、人びとも一緒に仕事し、イブラヒームの礎石が現れるまで作業を続けた。彼らはラクダの糞のように連なった二つの緑色の石を見つけた。

 一人の伝承学者は、「あるクライシュがてこをその石の間に入れて引き離し、動かしたところ、マッカの全域が振動したので、礎石をそのままにしておいた」、と私に語った。

 私は、「クライシュがその礎石の隅にシリア語の記述を発見した」、と聞いている。彼らは、ユダヤ教徒が読んで聞かせるまで、その記述内容の意味を理解できなかった。それには、「余はバッカ〔マッカ〕の主、アッラーである、余は天と地を創造し、太陽と月を形成して、マッカを創造し、それを七人の敬虔な天使で囲んだ。マッカは二つの山がそびえる間にあり、その地の人びとに乳と水の恩恵を授けた」、と記されていた。また私は次のように聞いている。「クライシュたちは、カアバ神殿中のマカーム・イブラヒーム〔イブラヒームのお立ちどころ〕マッカは、神の神聖な家であり、それは三つの方向から支えられている。その地の人びとがこの土地を汚す最初の民にならぬようにと書かれた記述を発見した」。

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