2012年11月3日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(112)

カアバの再建と使徒ムハンマドによる審判(1)


 使徒ムハンマドが三十五歳の時、クライシュは、カアバを再建することを決めた。カアバはぐらついた石で、人の身長よりも高く建設されており、彼らは、神殿の中央にあった井戸に保管されていた宝物の一部が盗まれたため、神殿の高さを上げて屋根で覆おうと計画したが、畏敬の念から解体を避けた。宝物は、ホザーア一族のムライフ・イブン・アムルの部族の解放奴隷、ドゥワイクのところで発見された。クライシュは、彼の手首を切断した。人びとは、宝物を盗んだ者がドゥワイクに預けた、と伝えている。

 そのころ、ギリシャの商人が所有する船がジッダの海岸で難破し、漂着していた。彼らは難破船の木材をカアバの屋根に使おうとした。また、ちょうどそのころ、マッカにコプト教徒〔キリスト教の一宗派〕の大工が滞在しており、必要とするものは人力も材料もすべてそろっていた。ところが、神聖な貢物が投げ入れられていた井戸から一匹の毒蛇が毎日、出てきて、カアバの壁で日光浴をしていた。誰かが近づこうとすると、蛇はかま首をもたげて、シュルシュルと声を発して口を開いて威嚇したため、人びとは恐怖で怖気づいた。ある日、蛇がそのようにして日光浴をしていると、神は鳥をお遣わしになり、蛇をくわえさせて飛び去らしめられた。するとクライシュは、「今や我らは、神が我らの計画していることに喜んでおられることを期待する。友人の大工はおり、木材も手に入り、神は蛇を取り除かれた」、と言って喜んだ。彼らが神殿の解体と再建を決め、アブー・ワハブ・イブン・アムル・イブン・アーイズ・イブン・アブド・イブン・イムラーン・イブン・マフズームが立ち上がり、カアバの石を手に取ると、石は彼の手から飛び跳ね、元の位置に戻った。その時彼は、「おお、クライシュよ、この建物の中に、不正をして得た利益、娼婦の報酬、高利貸しの金、不正あるいは暴力によるいかなるものも、持ち込んではならない」、と言って戒めた。人びとは、この言葉をアルワリード・イブヌル・ムギーラ・イブン・アブドッラー・イブン・ウマル・イブン・マフズームが言ったこととして伝えている。

 アブドッラー・イブン・アブー・ナジーフル・マッキが、アブドッラー・イブン・サフワーン・イブン・ウマイヤ・イブン・ハラフ・イブン・ワハブ・イブン・ホザーファ・イブン・ジュマハ・イブン・アムル・イブン・ホサイス・イブン・カアブ・イブン・ルアイイから伝え聞いた話を私に語った。アブドッラー・イブン・サフワーンは、「ジャアダ・イブン・ホバイラ・イブン・アブー・ワハブ・イブン・アムルの息子がカアバを回っているのを見た」と言い、アブドッラー・イブン・アブー・ナジーフル・マッキが、「その者は誰か」と尋ねた。アブドッラー・イブン・サフワーンは、「その者は、クライシュが解体を決めたとき、カアバから石を取り、その石が手から飛び跳ね、元の位置に戻ったため、人々に戒めの言葉を発したあのアブー・ワハブの祖父である」、と言った。

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