2012年11月3日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(104)

アブドゥル・ムッタリブの死と惜別の詩(1)


 使徒ムハンマドが八歳のとき、すなわち象の年から八年後、祖父アブドゥル・ムッタリブが逝去した。アルアッバース・イブン・アブドッラー・イブン・マアバド・イブヌル・アッバースは、使徒の親族から彼の逝去の時期を聞き、私に伝えた。ムハンマド・イブン・サイード・イブヌル・ムサイブが私に語ったところによれば、アブドゥル・ムッタリブは、死が迫っていることを悟ると、六人の娘、サフィーヤ、バッラ、アーティカ、ウンム・ハキームル・バイダーア、ウマイマ、アルワを呼び寄せ、「私が死ぬ前に、そなたたちが私の死を哀惜する詩を聞かせなさい」、と娘たちに言った。

 サフィーヤ・ビント・アブドゥル・ムッタリブは、父を悼んで詠んだ。

 「私は泣き叫ぶ女たちの声のために眠ることができない、

 人生の王者たる偉大な男のために泣いている、

 こぼれ落ちる真珠のような涙が頬をつたう、

 高貴な男のために。

彼は決して惨めな弱者ではない、

 彼の美徳は皆に明白だ。

 徳にあふれた寛大なシャイバよ、

 汝は良き父であり、あらゆる美点の継承者、

 家庭では誠実で、意志堅固、

 しっかりと立ち、独立自存。

 力強く、人を畏れさせ、堂々と振る舞う、

 人びとは称賛し、彼に従う、

 系譜は気高く、人柄は温和にして高潔、

 民が窮するときは何時であっても手を差し伸べた。

 すこしのけがれもなく、高貴だったのは彼の祖父、

 あらゆる男たちを超越する、奴隷も自由人も、

 極めて温和で、血統は高貴、

 彼のように寛大で、獅子のように勇猛な者が誰かいようか、

 人は過去の栄光によって不死となれようか、

 悲しいかな、不死は誰も獲得できない、

 彼は最後の夜を永遠とするであろう、

 卓越した栄光と永遠の系譜によって」。

 バッラは次のように詠んだ。

 「惜しむな、そなたの真珠のような涙を、

 物乞いを決して追い払わなかった寛大な人のために。

 輝かしい種族、事業はいつも成功する、

 容貌は美しく、偉大な徳性を備える。

 称賛すべき高貴なシャイバ、

 輝かしく、力強く、誉れ高き、

 温和で、不運には断固とし、

 寛大さにあふれ、贈り物は惜しまず、

 輝きでは誰にも優り、

 豪華な月のように輝く光。

 彼とても死を免れることはできなかった、

 変化と運命と定めが彼を奪った」。

 アーティカは、次のように詠んだ。

 「惜しむな、惜しんではならない、

 他者が眠る時、涙を惜しむな、

 存分に泣け、そなたの涙で、

 涙にくれて打ちひしがれて。

 泣け、長く思いのままに、その人のために、

永遠に老いぼれず、弱らない人のために、

 力強く、必要なときには寛大な、

 気高く、誠実な人のために。

 称賛すべきシャイバ、事業はいつも成功する、

 頼りがいがあり、たくましく、

 戦うときは鋭い剣を持ち、

 戦闘で敵を打ち砕く、

 気質はおおらか、物惜しみせず、

 忠実、壮健、純正、善良。

 家柄は誉れ高く、気高く、

 ほかの誰にも達成不可能な栄光の頂にそびえる」。

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