アブドゥル・ムッタリブの死と惜別の詩(1)
使徒ムハンマドが八歳のとき、すなわち象の年から八年後、祖父アブドゥル・ムッタリブが逝去した。アルアッバース・イブン・アブドッラー・イブン・マアバド・イブヌル・アッバースは、使徒の親族から彼の逝去の時期を聞き、私に伝えた。ムハンマド・イブン・サイード・イブヌル・ムサイブが私に語ったところによれば、アブドゥル・ムッタリブは、死が迫っていることを悟ると、六人の娘、サフィーヤ、バッラ、アーティカ、ウンム・ハキームル・バイダーア、ウマイマ、アルワを呼び寄せ、「私が死ぬ前に、そなたたちが私の死を哀惜する詩を聞かせなさい」、と娘たちに言った。
サフィーヤ・ビント・アブドゥル・ムッタリブは、父を悼んで詠んだ。
「私は泣き叫ぶ女たちの声のために眠ることができない、
人生の王者たる偉大な男のために泣いている、
こぼれ落ちる真珠のような涙が頬をつたう、
高貴な男のために。
彼は決して惨めな弱者ではない、
彼の美徳は皆に明白だ。
徳にあふれた寛大なシャイバよ、
汝は良き父であり、あらゆる美点の継承者、
家庭では誠実で、意志堅固、
しっかりと立ち、独立自存。
力強く、人を畏れさせ、堂々と振る舞う、
人びとは称賛し、彼に従う、
系譜は気高く、人柄は温和にして高潔、
民が窮するときは何時であっても手を差し伸べた。
すこしのけがれもなく、高貴だったのは彼の祖父、
あらゆる男たちを超越する、奴隷も自由人も、
極めて温和で、血統は高貴、
彼のように寛大で、獅子のように勇猛な者が誰かいようか、
人は過去の栄光によって不死となれようか、
悲しいかな、不死は誰も獲得できない、
彼は最後の夜を永遠とするであろう、
卓越した栄光と永遠の系譜によって」。
バッラは次のように詠んだ。
「惜しむな、そなたの真珠のような涙を、
物乞いを決して追い払わなかった寛大な人のために。
輝かしい種族、事業はいつも成功する、
容貌は美しく、偉大な徳性を備える。
称賛すべき高貴なシャイバ、
輝かしく、力強く、誉れ高き、
温和で、不運には断固とし、
寛大さにあふれ、贈り物は惜しまず、
輝きでは誰にも優り、
豪華な月のように輝く光。
彼とても死を免れることはできなかった、
変化と運命と定めが彼を奪った」。
アーティカは、次のように詠んだ。
「惜しむな、惜しんではならない、
他者が眠る時、涙を惜しむな、
存分に泣け、そなたの涙で、
涙にくれて打ちひしがれて。
泣け、長く思いのままに、その人のために、
永遠に老いぼれず、弱らない人のために、
力強く、必要なときには寛大な、
気高く、誠実な人のために。
称賛すべきシャイバ、事業はいつも成功する、
頼りがいがあり、たくましく、
戦うときは鋭い剣を持ち、
戦闘で敵を打ち砕く、
気質はおおらか、物惜しみせず、
忠実、壮健、純正、善良。
家柄は誉れ高く、気高く、
ほかの誰にも達成不可能な栄光の頂にそびえる」。
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