カアバの再建と使徒による審判(3)
ライス・イブン・アブー・スライムは次のように伝えている。「クライシュたちは、預言者ムハンマドが神から啓示を受ける四十年前にカアバで石を発見した。(彼らの言うことが正しいとすれば)その石には、『善をまく者は幸福を収穫する。悪をまく者は災いを収穫する。悪をなし、善で報われることがありえようか。否、いばらから葡萄を収穫できないように』、という碑文が刻まれていた」。
クライシュの諸部族は、各自個別にカアバのための石を集め、それらを積み上げていき、黒石の高さまで積み上げたが、そのとき、どの部族が黒石をその場所に安置するかをめぐって論争が起きた。各部族は、それぞれ自分たちが黒石を持ち上げて置くことを主張して対立し、部族間で同盟を結成して戦闘の準備を整えた。アブドッ・ダールの部族は血でいっぱいに満たされた桶をもってきて、アディーユ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの部族と共に、血の中に手を入れ、そして死ぬことを誓った。そのために彼らは、「血で洗う者たち」と呼ばれた。そのような状況が数日続くと、クライシュの諸部族はモスクに集まり協議したが、問題は全く解決しなかった。
ある伝承学者が伝えるところによると、その時クライシュの最年長者だったアブー・ウマイヤ・イブヌル・ムギーラ・イブン・アブドッラー・イブン・ウマル・イブン・マハズームは、モスクの門を最初にくぐった者を論争の審判とするように彼らに求めた。彼らはそれに同意した。そして最初に門をくぐって、入って来た者こそが神の使徒ムハンマドだった。彼らはムハンマドを見たとき、「彼は信頼できる者であり、我らは満足した。彼はムハンマドである」、と言った。ムハンマドが彼らのところに行き、彼らが事の次第を彼に説明すると、彼は、「外套を用意してほしい」、と言い、それが用意されると、彼は黒石をその中に置き、各部族に外套の端を握らせ、共同して黒石を持ち上げさせた。彼らが黒石を所定の場所に運び上げると、彼は黒石をその場所に納め、そして作業は続けられた。
クライシュたちは、啓示がもたらされる以前のムハンマドを、「アルアミーン」〔信頼できる者〕と呼んでいた。当初の予定通りにカアバの建造が終わると、アブドゥル・ムッタリブの息子アッズバイルは、クライシュたちにカアバの再建を恐れさせていた蛇について詩を詠んだ。
「私は鷲が興奮していた蛇を直撃したことに驚いた。
蛇は不気味にシュルシュルとよく音を立てていた、
ある時には前に飛び跳ねた。
我らがカアバの再建を計画したとき、
それは我らを恐怖させた。
我らが蛇の攻撃を恐れていたとき、鷲が舞い降りた、
まっ逆さまに降りて急襲した、
鷲は蛇を運び去り、我らを解放した、
もはや妨げられることなく作業するために。
我らは共同して建造に取り組んだ、
礎石と土地はそこにあった、
翌日には土台の高さを上げた、
労働者は一人も衣服を着なかった。
神はルアイイの息子たちを祝福された、
その礎石はいつでも彼らと共にあった、
アディーユとムッラの部族は、そこに集まった、
キラーブは彼らより先んじた。
王は我らに権力を与えてこの地に定住させた、
報奨は神に求めるものであるからだ」。
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