アブドゥル・ムッタリブの死と惜別の詩(3)
ムハンマド・イブン・サイード・イブヌル・ムサイブが私に語ったところによれば、アブドゥル・ムッタリブは、既に話すことができなかったため、惜別の詩に満足したことを示す合図を娘たちに送った。
アブドゥル・ムッタリブは、マッカで四千ディルハムの負債を負い、アブー・ラハブ・アブドゥル・ウッザ・イブン・アブドゥル・ムッタリブが、その負債を継承して返済した。アディーユ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの部族の親族にあたるホザイファ・イブン・ガーニムは、クライシュ一族に対する、アブドゥル・ムッタリブとクサイイ、その子孫たちの優位性について次のような詩を詠んだ。
「おお、涙を惜しみなく胸の下に流せ、
心配するな、降る雨に洗われよう、
涙を惜しむなかれ、暁のたびに、
運命が死を免除しなかった男のために泣け。
命が続く限り、涙をふりしぼれ、
善行を隠したクライシュの謙虚な英雄のために、
力強く熱烈な威厳の保護者のために、
容貌は整い、弱みも、驕りもない、
高名な貴公子、寛大で惜しむことがない、
彼こそは、干ばつと欠乏のときに降るルアイイの春の雨、
マアッドの中で最良の男、
言動、気質、系譜は気高い、
彼らの中で最良の血筋。
威厳と声望で最も名高く、
輝き、親切、聡明さで最高の男、
凶作で被害を受けたときの美徳でも。
称賛に値するシャイバのために泣け、
彼の顔は真っ暗闇の中で満月のように輝いた、
巡礼に水を与え、パンを砕いた人の息子、
そしてフィフルの盟主、アブド・マナーフ。
聖域のそばでザムザムのふたを開けた人、
彼の水の統治は、いかなる男の誇りよりも偉大なり、
彼の不幸はすべての者を泣かせよう。
クサイイの家族も、富める者も貧しき者も。
彼の息子たちは、老いも若きも偉大なり、
彼らは鷹の卵から飛び出した。
キナーナの全部族に対決したクサイイ、
試練のときも、繁栄のときもカアバを守護した。
定めと運命の変化が彼を連れ去ろうとも、
目覚しい業績をあげ、幸福に暮らした、
彼は堅固に武装した男たちを残した、
攻撃するときは、まさに槍のごとくに。
贈り物を私にくれたのは、アブー・ウトゥバ、
純血種の純白のラクダを。
満月のようなハムザは喜んで与える、
汚れがなく裏切ることもない、
そして栄光のアブド・マナーフ、名誉の守護者、
彼の氏族に親切で、親族に優しい。
彼らは男の中の最高の男たち、
彼らの若者たちは、滅ぶことも衰退することもない、王者の末裔。
彼らの子孫に会うときはいつでも、
彼らが父祖たちの道を歩んでいることが分かる。
彼らは谷を名声と栄光で満たした、
戦いと交流が実践されたとき、
偉大な建設者と建造物があった、
彼らの祖父、アブド・マナーフは彼らの幸運の修復者、
彼が我らを保護するため娘をアウフに嫁がせたとき、
フィフルの民が我らを裏切ったとき、敵から守るため、
我らは丘と谷で、彼の保護の下に行った、
ラクダが海に突進するまで。
ある人たちが遊牧していたころ、彼らは街で定住していた、
アムルの族長たち以外には誰もいなかった、
彼らは多数の家を作り、井戸を掘った、
そこからは巨大な海からのごとく水があふれた、
巡礼とほかの人びとがその水を飲めるように、
犠牲の翌朝、彼らが井戸に急いだとき、
彼らのラクダは三日間そこに横たわった
静かに、山とヒジュルの間で。
昔から我らは充足して暮らしていた。
ホンムあるいはアルハフルから水を引いて。
彼らは、復讐される不法を忘れた、
そしてばかげた中傷を無視した、
彼らは連合したすべての部族を集めた、
そして我らからバクル族の邪悪を取り除いた。
おお、ハーリジャよ、我が死すとも彼らへの感謝をやめてはならない、
そなたが墓に横たわるまでは、
そしてイブン・ルブナの恩を忘れるなかれ、
そなたの感謝の念に値する親切を、
系譜をたどればイブン・ルブナはクサイイに、
男の最高の希望が達成される部族に属する、
彼ら自身は栄誉の絶頂を極めた、
そして武勇では、その根源に達した、
気前のよさでは汝の民を超越した、
少年のころそなたはあらゆる気前のよい族長に勝っていた、
そなたの母はホザーアの純正な真珠となろう、
精通した系譜学者がいずれ巻物を編纂するとき、
シバの英雄まで彼女の系譜はたどり、その誉れに属する。
彼女の祖先は華麗な頂点でいかに気高いことか。
アブー・シャミールは彼らの一人、アムル・イブン・マーリクも、
そしてズゥー・ジャダンも、アブー・ジャブルも彼女の民、
そして二十年間、民を率いたアサドも、
かの地で勝利を保証しながら」。
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