2012年11月3日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(106)

アブドゥル・ムッタリブの死と惜別の詩(3)


 ムハンマド・イブン・サイード・イブヌル・ムサイブが私に語ったところによれば、アブドゥル・ムッタリブは、既に話すことができなかったため、惜別の詩に満足したことを示す合図を娘たちに送った。

 アブドゥル・ムッタリブは、マッカで四千ディルハムの負債を負い、アブー・ラハブ・アブドゥル・ウッザ・イブン・アブドゥル・ムッタリブが、その負債を継承して返済した。アディーユ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの部族の親族にあたるホザイファ・イブン・ガーニムは、クライシュ一族に対する、アブドゥル・ムッタリブとクサイイ、その子孫たちの優位性について次のような詩を詠んだ。

 「おお、涙を惜しみなく胸の下に流せ、

 心配するな、降る雨に洗われよう、

 涙を惜しむなかれ、暁のたびに、

 運命が死を免除しなかった男のために泣け。

 命が続く限り、涙をふりしぼれ、

 善行を隠したクライシュの謙虚な英雄のために、

 力強く熱烈な威厳の保護者のために、

 容貌は整い、弱みも、驕りもない、

 高名な貴公子、寛大で惜しむことがない、

 彼こそは、干ばつと欠乏のときに降るルアイイの春の雨、

 マアッドの中で最良の男、

 言動、気質、系譜は気高い、

 彼らの中で最良の血筋。

 威厳と声望で最も名高く、

 輝き、親切、聡明さで最高の男、

 凶作で被害を受けたときの美徳でも。

 称賛に値するシャイバのために泣け、

 彼の顔は真っ暗闇の中で満月のように輝いた、

 巡礼に水を与え、パンを砕いた人の息子、

 そしてフィフルの盟主、アブド・マナーフ。

 聖域のそばでザムザムのふたを開けた人、

 彼の水の統治は、いかなる男の誇りよりも偉大なり、

 彼の不幸はすべての者を泣かせよう。

 クサイイの家族も、富める者も貧しき者も。

 彼の息子たちは、老いも若きも偉大なり、

 彼らは鷹の卵から飛び出した。

 キナーナの全部族に対決したクサイイ、

 試練のときも、繁栄のときもカアバを守護した。

 定めと運命の変化が彼を連れ去ろうとも、

 目覚しい業績をあげ、幸福に暮らした、

 彼は堅固に武装した男たちを残した、

 攻撃するときは、まさに槍のごとくに。

 贈り物を私にくれたのは、アブー・ウトゥバ、

 純血種の純白のラクダを。

 満月のようなハムザは喜んで与える、

 汚れがなく裏切ることもない、

 そして栄光のアブド・マナーフ、名誉の守護者、

 彼の氏族に親切で、親族に優しい。

 彼らは男の中の最高の男たち、

 彼らの若者たちは、滅ぶことも衰退することもない、王者の末裔。

 彼らの子孫に会うときはいつでも、

 彼らが父祖たちの道を歩んでいることが分かる。

 彼らは谷を名声と栄光で満たした、

 戦いと交流が実践されたとき、

 偉大な建設者と建造物があった、

 彼らの祖父、アブド・マナーフは彼らの幸運の修復者、

 彼が我らを保護するため娘をアウフに嫁がせたとき、

 フィフルの民が我らを裏切ったとき、敵から守るため、

 我らは丘と谷で、彼の保護の下に行った、

 ラクダが海に突進するまで。

 ある人たちが遊牧していたころ、彼らは街で定住していた、

 アムルの族長たち以外には誰もいなかった、

 彼らは多数の家を作り、井戸を掘った、

 そこからは巨大な海からのごとく水があふれた、

 巡礼とほかの人びとがその水を飲めるように、

 犠牲の翌朝、彼らが井戸に急いだとき、

 彼らのラクダは三日間そこに横たわった

 静かに、山とヒジュルの間で。

 昔から我らは充足して暮らしていた。

 ホンムあるいはアルハフルから水を引いて。

 彼らは、復讐される不法を忘れた、

 そしてばかげた中傷を無視した、

 彼らは連合したすべての部族を集めた、

 そして我らからバクル族の邪悪を取り除いた。

 おお、ハーリジャよ、我が死すとも彼らへの感謝をやめてはならない、

 そなたが墓に横たわるまでは、

 そしてイブン・ルブナの恩を忘れるなかれ、

 そなたの感謝の念に値する親切を、

 系譜をたどればイブン・ルブナはクサイイに、

 男の最高の希望が達成される部族に属する、

 彼ら自身は栄誉の絶頂を極めた、

 そして武勇では、その根源に達した、

 気前のよさでは汝の民を超越した、

 少年のころそなたはあらゆる気前のよい族長に勝っていた、

 そなたの母はホザーアの純正な真珠となろう、

 精通した系譜学者がいずれ巻物を編纂するとき、

 シバの英雄まで彼女の系譜はたどり、その誉れに属する。

 彼女の祖先は華麗な頂点でいかに気高いことか。

 アブー・シャミールは彼らの一人、アムル・イブン・マーリクも、

 そしてズゥー・ジャダンも、アブー・ジャブルも彼女の民、

 そして二十年間、民を率いたアサドも、

 かの地で勝利を保証しながら」。

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