2012年9月18日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(95)

アブドゥル・ムッタリブの、息子を犠牲にする近い(1)


 アブドゥル・ムッタリブが、ザムザムを掘っているとき、クライシュがそれに反対すると、彼は、もし彼が十人の息子を得て育て、クライシュから彼を守るならば、彼は息子の一人をカアバで犠牲に捧げると誓った、と伝えられており、それが真実かどうかは神が知っている。後に彼は、彼を守ることができる十人の息子をもうけると、彼らを集めて誓いのことについて語り、神との約束を守るよう息子たちに呼びかけた。彼らは父に従うことに同意して、どうすればよいか聞いた。彼は、めいめいが一本の矢に自分の名前を書いて彼のところに持って来るように命じ、彼らがそうすると、彼は矢をカアバの中心にある偶像、ホバルの前に持って行った。ホバルの前に一つの井戸があった。その井戸にカアバへの贈り物が保管されていた。

 ホバルのそばには、七本の矢が置かれ、それぞれの矢にはある言葉が書かれていた。一つの矢には、「血の代償」と記されていた。誰かが、血の代償を支払うかについて争ったとき、彼らは七本の矢でくじを引き、当たりくじを引いた者が血の代償金を払わねばならなかった。もう一つには「然り」、ほかには「否」と書かれていた。彼らは、託宣を祈願した問題について、このくじの結果に従って行動したのである。ほかの四本にはそれぞれ、「あなたに由縁するもの」、「仲間に由縁するもの」、「部族外の者に由縁するもの」、「水」、と記されていた。井戸を掘りたいとき、人びとはくじを投げて、「水」の矢が当たった所がどこであっても、彼らはそこを掘った。男の子を割礼するとき、あるいは結婚を決めるとき、あるいは遺体を埋めるとき、あるいはまたある人の系譜が疑われたとき、人びとは百ディルハムを持って当事者をホバルのところに連れていき、ラクダを犠牲にして、それらをくじを引く祭司に与えた。次に彼らは、当事者を祭司のそばに連れてきて、「おお、我らが神よ、彼について正しい導きを示し給え」と宣言して託宣を求めた。そして彼らは、くじを引く祭司に向かって「引け」と言い、「あなたに由縁するもの」というくじが当たると、その者は彼らの部族の構成員と見なされた。もし、「仲間に由縁するもの」というくじが当たると、その者は同盟者と見なされた。そして、「部族外の者に由縁するもの」、というくじが出ると、その者は彼らとは血縁関係がなく、また同盟者でもないと見なされた。またほかの問題で、「然り」が出ると、人びとはそのように行動し、もし「否」と出ると、彼らは問題の解決を一年延期して、その後再びくじを引いた。

 アブドゥル・ムッタリブは、矢を持っていた祭司に向かって、「これらの矢を使って私の息子たちのためにくじを引いてください」と言い、彼が行った誓約について語った。息子たちはそれぞれの名前が記された矢を祭司に渡した。アブドッラーは末息子で、彼とアッズバイル、アブー・ターリブは、ファーティマ・ビント・アムル・イブン・アーイズ・イブン・アブド・イブン・イムラーン・イブン・マフズーム・イブン・ヤカザ・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルとの間に生まれた息子であった。アブドッラーは、アブドゥル・ムッタリブの最愛の子で、矢が彼に当たらないことを〔アブドゥル・ムッタリブは〕心中で懇願していた、と伝えられている。(彼は神の使徒の父である)。祭司がくじを引こうとして矢を取ったとき、アブドゥル・ムッタリブは、ホバルのそばでアッラーに祈っていた。祭司がくじを引くと、アブドッラーの矢が当たった。

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