2012年9月18日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(97)

アブドッラー・イブン・アブドゥル・ムッタリブとの結婚を自ら申し入れた娘


 アブドッラーの手をとってアブドゥル・ムッタリブが外出したとき、彼らはカアバで(そのように伝えられている)、ワラカ・イブン・ナウファル・イブン・アサド・イブン・アブドゥル・ウッザの妹で、アサド・イブン・アブドゥル・ウッザ・イブン・クサイイ・イブン・キラーブ・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルの部族の娘のそばを通りかかった。彼女はアブドッラーを見ると、「どこへ行くのですか、アブドッラー」、と尋ねた。彼は、「父と一緒に」、と答えた。彼女は、「私を連れて行ってくれたら、あなたは、あなたの代わりに犠牲にされたと同じように多数のラクダを持つでしょう」、と言った。彼は、「私は父と共におり、父の希望に反して行動できないので、父から離れることはできない」、と申し出を断った。

 アブドゥル・ムッタリブは、血筋からもまた名声によってもズフラ一族の指導者である、ワハブ・イブン・アブド・マナーフ・イブン・ズフラ・イブン・キラーブ・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルのところに、アブドッラーを連れていき、彼の娘アーミナと結婚させた。当時、彼女は、血筋も格式も、クライシュ一族のなかで最も優れた女性だった。彼女の母は、バッラ・ビント・アブドゥル・ウッザ・イブン・ウスマーン・イブン・アブドッ・ダール・イブン・クサイイ・イブン・キラーブ・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルだった。バッラの母は、ウンム・ハビーブ・ビント・アサド・イブン・アブドゥル・ウッザ・イブン・クサイイ・イブン・キラーブ・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルで、バッラの祖母は、バッラ・ビント・アウフ・イブン・ウバイド・イブン・ウワイジュ・イブン・アディーユ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイ・イブン・ガーリブ・イブン・フィフルである。

 アブドッラーは、すぐにその日、アーミナと結婚した、と伝えられており、彼女は、ほどなく神の使徒を身ごもった。翌日、彼は外出し、前日に彼に結婚を申し込んだ娘と出会った。彼がその娘に、なぜ前日のように結婚を申し込まないのか、と尋ねると、娘は、以前は輝いていた光が彼から消えているので、もはや彼を必要とはしない、と答えた。その娘は、キリスト教徒で聖書を勉強していた兄のワラカ・イブン・ナウファルから、彼らの民の間に預言者が出現する、と聞いていたのである。

 私の父、イスハーク・イブン・ヤサールは、「アブドッラーが粘土を使う作業をした後で泥をつけたまま、アーミナ・ビント・ワハブのほかに妻にしていた女のところに行った、と聞いた」と私に語った。彼女は、泥がついていたので、アブドッラーを受け入れなかった。すると彼は、彼女のもとから出て、手を洗って、もく浴した。そして、アーミナのところへ出かける途中、彼女のそばを再び通りかかった。今度は、彼女は彼を招き入れようとしたが、彼は拒否してアーミナのところに行き、アーミナはムハンマドを身ごもった。次にアブドッラーがもう一人の妻と会ったとき、何か望むことはないかと彼女に尋ねると、「何もありません。あなたが私のそばを通った時、目と目の間に白い光が輝いていたのに、私の招きを断ってアーミナのところに行ったので、アーミナがそれを奪ってしまった」、と彼女は答えた。

 この女性は、彼がそばを通りかかったとき、彼の目の間に、馬の流星のような光が輝いていたといつも語っていた、と伝えられている。彼女は、「その光が私の内に宿ることを希望して彼を招いたが、彼は私を拒否してアーミナのところに行ったので、彼女は神の預言者を身ごもったのです」、と語った。このようにして、神の使徒は、父の家系においても、母の家系においても、生まれと名誉において、当時の民の間で最も高貴な人物であった。神よ、彼を祝福し、守り給え。

0 件のコメント:

コメントを投稿