2012年9月18日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(100)

預言者ムハンマドの誕生と養育(2)


 サアド・イブン・バクルの部族のハリーマ・ビント・アブー・ズアイブは、乳母として使徒を養育するように頼まれた。アブー・ズアイブの名は、アブドッラー・イブヌル・ハーリス・イブン・シジナ・イブン・ジャービル・イブン・リザーム・イブン・ナースィラ・イブン・クサイヤ・イブン・ナスル・イブン・サアド・イブン・バクル・イブン・ハワーズィン・イブン・マンスール・イブン・イクリマ・イブン・ハサファ・イブン・カイス・イブン・アイラーンといった。

 使徒の育ての父であるハリーマの夫は、アルハーリス・イブン・アブドゥル・ウッザ・イブン・リファーア・イブン・マッラーン・イブン・ナースィラ・イブン・クサイヤ・イブン・ナスル・イブン・サアド・イブン・バクル・イブン・ハワーズィンであった。

 アブドッラー・イブヌル・ハーリスは使徒の乳兄弟、ウナイサとホザーファは、乳姉妹だった。ホザーファは、アッシャイマアと呼ばれ、彼らは彼女の本名では呼ばなかった。彼らはみな、ハリーマ・ビント・アブドッラー・イブヌル・ハーリスの子供だった。アッシャイマアは、使徒の保育について母を手伝っていた、と伝えられている。

 アルハーリス・イブン・ハーティブ・アッジュマヒの被護者であるジャハム・イブン・ジャハムは、アブドッラー・イブン・ジャアファル・イブン・アブー・ターリブから聞いた話を、あるいはアブドッラーの話を聞いた人から伝え聞いた話を、次のように私に語った。使徒の育ての母ハリーマは、自分の夫と、そのとき育てていた幼子や自分の部族の女たちと共に、里子を探すため、故郷を出ていった。その年は飢きんに見舞われ、彼らは困窮していた。彼女は、乳を一滴も出さない年老いた雌ラクダを連れ、みすぼらしい雌ロバに乗っていた。彼女の飢えた幼子が泣いたので、彼らは一晩中眠ることができなかった。彼女は幼子に乳を与えられず、雌ラクダも朝の一杯の乳すら出さなかった。そこで彼らは、雨と救いを待ち望んでいた。ハリーマは語った。「私は、ひよわで衰弱していたのでほかのどの乗り手も寄せ付けず、みなに嫌われていた雌ロバに乗っていました。私たちがマッカに到着し、里子を探すと、乳飲み子だった神の使徒が差し出されましたが、私たちはみな子供の父親からお礼を受けることを期待していたので、神の使徒が孤児であることを知らされると、彼を引き取る者は一人もいませんでした。人びとはみな、孤児ですって、母と祖父が何をしてくれるのでしょうかと言って彼をはねつけました。私を除いて皆が里子を見つけ、私たちが出発すると決めたとき、私は夫に、神にかけて、私は里子を見つけないまま皆と一緒に帰りたくはありません。私はあの孤児を引き取りますと言いました。夫は、気がすむようにしたらいい、彼のために神が我らを祝福してくれるかもしれないと言いました。それで、ほかに里子を見つけられないというただそれだけの理由で、私は彼を引き取りに行きました。その乳飲み子をテントに連れ帰り、彼を胸に抱くや否や、乳房から母乳があふれ出し、乳飲み子は満足するまで飲み、彼の乳兄弟もそうしました。それまでは、私たちも子供もあれほど眠れなかったというのに、このときは、二人の子はぐっすりと眠り込んでしまいました。夫が立ち上がって、年老いた雌ラクダのそばに行くと、何ということでしょう、ラクダの乳房もいっぱいに張っていました。私たちは夫が搾った乳を満足するまで飲み、楽しい夜を過ごしました。翌朝、夫は、分かるかい、ハリーマ、お前は素晴らしい贈りものを授かったようだと言いました。私は、神にかけて、私もそう希望しますと答えました。そして、私が使徒を抱いて例の雌ロバに乗って出発すると、私のロバはほかのロバがついて来れないほどの速さで歩んだため、仲間たちは、いまいましい、止まって待っておくれ。それはお前が乗ってきたロバではないのかと言いました。私が、乗ってきたロバですよと答えると、彼らは、神にかけて、何か驚くべきことが起きたと言って驚きました。私たちは、サアド族の土地の居住地に帰りましたが、私はここほど荒れ果てた地を知りません」。

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