2012年8月25日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(84)

クサイイ後のクライシュ一族の分裂と、アルムタィイブーン(香る者たち)同盟


 クサイイの死後、彼の息子たちはクライシュ一族を統治し、クサイイが人びとのために土地を割り当てたように、マッカを居住区に区画した。息子たちは、彼らの民と、同盟部族のために居住区を分割して、売り払った。クライシュ一族は、不和、対立することなく、この分割に参加した。その後、アブド・マナーフの息子たち、すなわちアブド・シャムス、ハーシム、アルムッタリブ、ナウファルは、クサイイがアブドッ・ダールに与え、アブドッ・ダールの息子たちが握っていた権限、とりわけ前述したような権限を、奪取することで合意した。彼らは、自分たちの優位性と部族の間の地位から判断して、自分たちの方がよりふさわしい権利を持っていると考えたのである。この結果、クライシュ一族は、アブド・マナーフの部族、アブドッ・ダールの部族の二派に分裂した。前者は、自分たちがより正当な権利を有していると主張し、後者は、クサイイが自分たちの部族に与えた権限はその部族から奪われないと主張した。

アブド・マナーフの部族の首領は、長男のアブド・シャムス、アブドッ・ダールの部族の首領は、アーミル・イブン・ハーシム・イブン・アブド・マナーフ・イブン・アブドッ・ダールだった。アブド・マナーフの部族に味方したのは、アサド・イブン・アブドゥル・ウッザ・イブン・クサイイ、ズフラ・イブン・キラーブの部族、タイム・イブン・ムッラ・イブン・カアブの部族、アルハーリス・イブン・フィフル・イブン・マーリク・イブヌン・ナドゥルの部族で、アブドッ・ダールの部族の側についたのは、マフズーム・イブン・ヤカザ・イブン・ムッラ、サハム・イブン・アムル・イブン・ホサイス・イブン・カアブの部族、ジュマハ・イブン・アムル・イブン・ホサイス・イブン・カアブの部族、アディーユ・イブン・カアブの部族だった。このとき、中立を保ったのは、アーミル・イブン・ルアイイとムハーリブ・イブン・フィフルの部族であった。

 彼らは、永遠に、決して味方を見捨てず、裏切らない、と固く誓い合った。アブド・マナーフの部族は、(部族のある女が用意したと、彼らが主張している)香水をいっぱいに満たした壺を持って来て、カアバのそばのモスクの中に、同盟者たちのために置いた。そして彼らと、彼らの同盟者は手を壺のなかに入れて、厳粛な誓いを立てた。それから彼らは、手をカアバにこすり付けて、誓約をさらに厳粛なものとした。この理由によって彼らは、「香る者たち」と呼ばれた。

 もう一方の側もカアバで同様の誓約を結び、彼らは「同盟者」と呼ばれた。次に彼らは部族ごとにグループを構成し、部族と部族が対決するようにした。アブド・マナーフの部族にはサハム族、アサド族にはアブドッ・ダールの部族、ズフラ族にはジュマハ族、タイム族にはマフズーム族、アルハーリス族にはアディーユ・イブン・カアブの部族が敵対した。彼らは、それぞれの敵対部族を全滅させるよう命令を受けた。

 彼らがこのように戦闘を決意したとき、アブド・マナーフの部族が巡礼者たちに水を与え、税金を徴収する権利を行使し、一方、アブドッ・ダールの部族は、カアバに入る許可、軍旗の授与、集会の主催の権限を保持するという条件の下で、突然、和平が審議された。双方はこの和平取引を好意的に受け止めたので、和解が成立し、戦争は回避された。神がイスラームをもたらされるまで、マッカにおける統治事情はこのようであり、神の使徒は、「無知の時代にいかなる同盟があろうとも、イスラームは正義と善行を強化する」、と語られた。

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