2012年8月25日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(85)

アルフドゥールの誓約(1)


 クライシュ一族は、盟約を結ぶことを決め、その目的のために、年長者で信望の厚かった、アブドッラー・イブン・ジュズアーン・イブン・アムル・イブン・カアブ・イブン・サアド・イブン・タイム・イブン・ムッラ・イブン・カアブ・イブン・ルアイイの家に集まった。盟約の当事者は、ハーシム、バヌール・ムッタリブ、アサド・イブン・アブドゥル・ウッザ、ズフラ・イブン・キラーブ、タイム・イブン・ムッラの部族だった。もし誰かが、たとえその者がマッカの住人であれ、あるいはよそ者であれ、彼らに不正を働いたならば、敵対者に反撃し、奪われた財産を取り戻す、という厳粛な誓約で、彼らは団結した。クライシュ一族は、この同盟をアルフドゥール道徳者たちの誓約、と呼んだ。

 ムハンマド・イブン・ザイド・イブヌル・ムハージル・イブン・クンフズ・アッタイミは、タルハ・イブン・アブドッラー・イブン・アウフ・アッズフリーが聞いたことを私に語った。「神の使徒は、私は、アブドッラー・イブン・ジュズアーンの家の中に、いかなる数の優良なラクダとも交換できない同盟を目撃した。もしイスラームの時代にこのような同盟に参加するよう招請されたならば、きっと私は参加したであろう、とおっしゃった」。

 ヤズィード・イブン・アブドッラー・イブン・ウサーマ・イブヌル・ハーディ・アッライスィは、ムハンマド・イブン・イブラヒーム・イブヌル・ハーリス・アッタイミから伝え聞いた話を私に語った。アルホサイン・イブン・アリー・イブン・アブー・ターリブと、アルワリード・イブン・ウトゥバ・イブン・アブー・スフヤーンの間に、彼らがズル・マルワに持っていた財産をめぐる争いがあった。その時、アルワリードは、ウマイヤ朝初代カリフであった伯父ムアーウィヤの任命で、マディーナの総督に就いていた。アルワリードは、総督として権力を持っていたので、アルホサインの権利をだまし取った。そこでアルホサインは、「神にかけて、お前は私に正義を行わねばならない、さもなければ、私は剣をとり、使徒のモスクに立って、フドゥールの誓約に訴える」、とアルワリードに言った。当時、アルワリード側についていたアブドッラー・イブヌッ・ズバイルでさえ、「神に誓って、もしアルホサインが誓約に訴えるのならば、私も剣をとって彼と共にあり、彼に正義が行われるか、あるいは共に死ぬまで戦う」、と言った。この知らせが、アルミスワル・イブン・マハラマ・イブン・ナウファル・アッズフリーとアブドッ・ラハマーン・イブン・ウスマーン・イブン・ウバイドッラー・アッタイミに届くと、彼らも同じように宣言した。何が起きているかを察知したアルワリードは、アルホサインを満足させた。

 アルホサインは、預言者の娘ファーティマと第四代正統カリフ・アリーの息子で、ムアーウィヤの息子ヤズィード・イブン・ムアーウィヤがカリフ職を世襲することを拒否した。アリーは預言者の従弟でもあったので、カリフ職は預言者に最も近い血縁者が継承すべきであるとするシーア(アリー)派の支援を受けて、カリフを宣言するためイラクに向かったが、六八〇年、カルバラーでヤズィードが派遣した軍勢によって殺された。

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