2012年8月6日月曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(80)

クサイイ・イブン・キラーブは、いかにしてマッカの実権を握ったか、彼はいかにしてクライシュを団結させたか、そしてクダーアが彼に与えた支援について(1)


 その年、スーファたちは、いつものように振る舞っていた。アラブの人びとは、ジュルフム族とホザーア族が統治していた時代、それが義務であると考えて、辛抱強く耐え忍んでいた。クサイイは、クライシュ、キナーナ、クダーアの族長たちを引き連れて、アルアカバでスーファたちに向かって、「我々は、お前たちより正当なマッカの統治権を持っている」、と宣言した。激しい戦闘の末、スーファは敗北し、クサイイが権力を握った。

 すると、ホザーア族とバクル族は、クサイイがスーファたちと同様に彼らに制約を課し、カアバと彼らの間に割り込み、マッカの管理にも介入して来ると考えて、クサイイから距離を置いた。彼らが距離を置くと、クサイイは敵意をあらわにし、彼らと戦うため軍勢を集めた。ホザーア族とバクル族も出撃し、マッカの谷で激戦が行われ、双方は共に重大な損害を被った。そこで彼らは、和平することに合意し、アラブの一人に調停を要請することにした。調停役に任命されたのは、ヤアマル・イブン・アウフ・イブン・カアブ・イブン・アーミル・イブン・ライス・イブン・バクル・イブン・アブド・マナート・イブン・キナーナであった。彼の判定は、クサイイがホザーア族よりも正当なカアバとマッカの統治権利を持っており、クサイイが流した血は無効で、その血の代償は無視されるが、ホザーア族とバクル族が殺したクライシュ、キナーナ、クダーアの各部族の血は補償されねばならず、またクサイイにはカアバとマッカでの行動の自由が与えられる、というものだった。ヤアマル・イブン・アウフは、血の代償金を無効とし、免除したので、すぐに、アッシャッダーハ無効・免除と呼ばれるようになった。

 かくしてクサイイは、カアバとマッカの統治権を掌握し、自分の一族を居住地からマッカに連れて来た。彼は、自分の一族とマッカの住民に対し王のように振る舞ったので、彼らは彼を王として崇めた。だが彼は、アラブの慣習的な権利を変更する権利を持っておらず、それを保証するのが彼の義務だと感じて、人びとに慣習的な権利を保証した。そこで彼は、サフワーン族、アドワーン族、暦調節師、ムッラ・イブン・アウフの部族が持っていた慣習的な権利を、イスラームの到来によって神がこれらの権利のすべてを停止されるまで、承認した。クサイイは、カアブ・イブン・ルアイイの部族で、初めて王権に就き、王として部族を従えた最初の人物である。彼は、カアバの鍵を管理し、ザムザムの泉から巡礼者たちに給水し、給食する権利、集会を主宰し、軍旗を授ける権利を保有した(コラム4を参照)。彼の手にマッカの権威のすべてが集中し、彼は自らの一族のためにマッカの街を各居住区に分割し、すべてのクライシュ一族をマッカの家に住まわせた。

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