2012年8月25日土曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(86)

アルフドゥールの誓約(2)


 また同様に、ヤズィードは、ムハンマド・イブン・イブラヒーム・イブヌル・ハーリス・アッタイミから伝え聞いた話を私に語った。クライシュの中で最も学識のあったムハンマド・イブン・ジュバイル・イブン・ムトゥイム・イブン・アディーユ・イブン・ナウファル・イブン・アブド・マナーフは、アブドゥル・マリク・イブン・マルワーン・イブヌル・ハカムが、イブヌッ・ズバイルを殺し、人びとがアブドゥル・マリクに敵対して集まったとき、アブドゥル・マリクと会った。アブドゥル・マリクは、ムハンマド・イブン・ジュバイルに会うと、「おお、アブー・サイード〔ムハンマド・イブン・ジュバイル〕よ、我らとあなたがた(アブド・シャムスの部族とナウファル族)は、フドゥールの誓約の当事者ではなかったではないか」、と尋ねた。ムハンマドは、「あなたが一番ご存知である」、と答えた。アブドゥル・マリクは、「いや、アブー・サイードよ、真実を語ってほしい」、とまた問いかけた。すると彼は、「そうだ、神に誓って、我らは誓約を結ばなかった」、と答えた。「あなたの言うとおりだ」、とアブドゥル・マリクは言った」。

 初代正統カリフ、アブー・バクルの孫であり、預言者の妻アーイシャの甥でもあるアブドゥッラー・イブヌッ・ズバイルは、アルホサインが死去すると、ウマイヤ朝に対抗してマディーナでカリフを宣言、六八三年と六九二年の二度にわたってウマイヤ軍と戦闘したが、二度目の戦いで切り倒された。これは、ウマイヤ朝カリフのアブドゥル・マリクが、ウマイヤ家は「フドゥールの誓約」の当事者ではなかったことを、ムハンマド・イブン・ジュバイルに確認したことを意味する。二度の戦闘でマッカのカアバ神殿は焼失したが、その後再建された。

 アブド・シャムスは旅がちで、マッカにほとんどいなかったために、ハーシム・イブン・アブド・マナーフが巡礼者たちに食や水の提供を監督した。しかも、アブド・シャムスは貧しく、大家族であったが、ハーシムは裕福だった。巡礼者たちがマッカにやって来ると、彼は立ち上がってクライシュ一族に、「皆は神の隣人で、主の神殿の民である。この祝祭で、神への訪問者、カアバへの巡礼が皆のところにやって来た。彼らは神の客人であり、主の客人は皆の気前のよさを求める最も正当な権利を持っている。だから、彼らがここに滞在している間、団結して彼らに必要な食べ物を集めよう。もし、私の財産が十分であれば、私はこの負担を皆に負わすことはない」、と呼びかけた、と伝えられている。そこでクライシュ一族は、互いの財力に応じて税金を課し、巡礼者たちがマッカを離れるまで、彼らに食べ物を提供していた。

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