2012年7月2日月曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(62)

アムル・イブン・ルハイイの物語と、アラブにおける偶像崇拝(3)


 ミルカーン・イブン・キナーナ・イブン・ホザーイマ・イブン・ムドゥリカ・イブン・イルヤース・イブン・ムダルの部族は、〔ジッダの北の〕彼らの国の砂漠の平地にある小高い岩を偶像とし、サアドと呼んでいた。彼らは、部族の一人が、肉食用ラクダの群れを岩のそばに連れて行き、偶像の恩恵にあずからせようとした物語を伝えている。人を運んだこともなく、放牧されていたラクダたちは、サアドの岩を見てそこで流された犠牲の血のにおいをかぐと、後ずさりして散り散りに逃げて行った。これに怒ったミルカーン族の男は、石を拾って偶像に投げつけ、「神に呪われよ。お前は私のラクダを恐れさせた」、と叫んだ。散り散りに逃げたラクダを探し、もとの群れに戻すと、今度は、次のように詩を詠んだ。

 「我らは、財産を増やすためにサアドを崇拝しにきた、

 それなのに、サアドはラクダを追い払った。

 我らは、サアドとは何の関係もない。

 サアドは、高いだけでなんのとりえもない。

 サアドは正しいことも、悪いこともできない」。

 ダウス族は、アムル・イブン・フママッ・ダウスィが所有する偶像を崇拝していた。

 クライシュ一族は、カアバ神殿の中の井戸のそばに、ホバルと呼ばれる偶像を持っていた。また彼らは、ザムザムのそばにイサーフとナーイラと呼ばれる偶像を置き、犠牲をささげる際にはそこで屠殺していた。かつて、イサーフ・イブン・バギーと、ナーイラ・ビント・ディークは、ジュルフム族の男女で、カアバで性的な関係を持つ罪を犯したため、神によって彼らは、石に変えられてしまったのだった。

 アブドッラー・イブン・アブー・バクル・イブン・ムハンマド・イブン・アムル・イブン・ハズムは、アムラ・ビント・アブドッ・ラハマーン・イブン・サアド・イブン・ズラーラから伝え聞いた話について語った。「アーイシャが、イサーフとナーイラは、ジュルフムの男女で、カアバで性的な関係を持っていたために、神は彼らを石に変えられてしまったと、私たちはいつも聞かされていた、と話したのを聞いた」。しかし、これが真実かどうかは、神だけがご存知である。

 アブー・ターリブ〔神の使徒のおじ〕は、次のように詠んだ。

 「イサーフとナーイラのほとりの水の流れるところで、

巡礼たちはラクダをひざまずかせる」。

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