2012年7月2日月曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(65)

バヒーラ、サーイバ、ワスィーラ、そしてハーミーについて


 バヒーラとは、サーイバが産んだ雌ラクダである。サーイバとは、雄ラクダを途中で産むことなく、十頭の雌ラクダを続けて産む雌ラクダである。サーイバは放し飼いにされ、決して人を乗せず、毛を刈られることもなく、その乳を飲むのは客人にしか許されない。十頭の雌ラクダを産んでサーイバとなったラクダが産んだ雌ラクダは、耳に切り目を入れられ、母親のサーイバと同様に待遇されて、人を乗せることも、毛を刈られることもなく、客人のみがその乳を飲む。それがサーイバの産んだ雌ラクダ、バヒーラである。ワスィーラとは、雄ヒツジを途中で産むことなく、双子の雌ヒツジを五回続けて、つまり計十頭の雌ヒツジを産む雌ヒツジである。ワスィーラの語源は、「ワサラ」〔続く〕である。ワスィーラとなった雌ヒツジが産んだ雌ヒツジは、神に犠牲としてささげ、雄ヒツジは自分たちで保有する。ただし、ワスィーラの産んだヒツジが死んだときには、神と人びとで分かち合う。

 ハーミーは、雄ラクダが途中で産まれることなく、十頭の雌ラクダを続けて産ませる種ラクダである。彼の背は禁断とされ、だれも乗ることができず、毛を刈られることもない。ハーミーは、放し飼いにされ自由に種をつける。彼を種つけ以外に使用することはない。

 神はムハンマドをお遣わしになり、「アッラーが、バヒーラまたはサーイバ、ワスィーラまたはハーミーを定められたのではない。ただし、不信心者がアッラーに対して虚構したものである。かれらの多くは理解しない」(五章一〇三節)、と啓示された。また神は、ほかの啓示も与えられた。「また彼らは言う。これらの家畜の胎内のものはもっぱら男子のためのものであり、婦女には禁じられている。だが死産した場合、みなとともにそれにあずかる。神は彼らの述べたことに報いたもうであろう。神は聡明にしてよく知りたもうお方である」(六章一三九節)。「言ってやれ。おまえたちはどう思うのか。神が下された糧を、おまえたちは、あるいは禁忌とし、あるいは合法とした。言うがよい、神が許したもうたのか。それとも、おまえたちが神をだしにして捏造しているのか」(一〇章五九節)。「うちヒツジ二頭とヤギ二頭。言ってやれ、雄同士二頭を禁じたもうたのか、あるいは雌同士二頭をか。それとも二頭の雌の胎内にあるものをか。もしおまえたちが真実を語っているのなら、確信をもって私に告げよ。ラクダ二頭と牛二頭。言ってやれ、雄同士二頭を禁じたもうたのか、あるいは雌同士二頭をか。それとも二頭の雌の胎内にあるものをか。おまえたちは神が命じたもうたときにいあわせたのか。人々を迷わそうとして、なにも知りもしないのに神にたいして嘘を捏造する者より悪い者がどこにいようか。神が不義の民を導きたもうことはない」(六章一四三ー一四四節)。 

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