2012年7月2日月曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(69)

アウフ・イブン・ルハイイの移住(2)


 ムッラ・イブン・アウフの部族の一人、アルハーリス・イブン・ザーリム・イブン・ジズィーマ・イブン・ヤルブウが、アンヌーマーン・イブヌル・ムンズィルから逃れて、クライシュと結託したとき、次のように詠んだ。

 「私の部族はサアラバ・イブン・サアドではない、

 長髪のファザーラ族でもない。

 もしお前が聞かねばならぬのなら、私の部族はルアイイである。

 マッカで彼らはムダルに戦いを指揮した。

 我らに最も近い親族と家族を離れて、

バギード族に従うとは、愚かであった。

 水を求める者にとってそれは愚かなことだった、

 飲み干しておいて井戸を捨て、蜃気楼を追いかけるとは。

 自ら進んで彼らと行動を共にすべきとは、いまいましい、

 牧草を求めてあちこちさまよい、見つからないとは。

 クライシュのラワーハは、私を彼のラクダに乗せた、

 そして見返りを求めなかった」。

 サハム・イブン・ムッラの部族の、アルホサイン・イブヌル・ホマームル・ムッリーは、アルハーリス・イブン・ザーリムに反論し、自分はガタファーンに属すると主張して、

 「見よ、お前は我らの一族ではない、我らはお前たちとは何の関係もない。

 我らはルアイイ・イブン・ガーリブとの関係を拒絶する。

 我らは誇り高きヒジャーズの高原に居住するが、

 お前たちは二つの山の間の緑の平地に住む」、

と、二つの山の間〔すなわちマッカ〕に住むのがクライシュ一族であることを意味して、詩を詠んだ。後になってアルホサインは、自分の詩を後悔して、アルハーリス・イブン・ザーリムの言葉が真実であると認めた。彼は、自分がクライシュに属すると主張し、自分の過ちを自ら非難して、

 「私はかつて言ったことを撤回する、

 それはうそつきの語る言葉であった。

 私は二枚舌を使っていたのであろう、

 一方は虚言で、もう一方は虚栄という。

 我らの父祖はキナーナ族で、彼の墓はマッカにある、

 山の間の緑の平地アルバトハにある。

 我らは聖域の四分の一を遺産として所有し、

 平地の四分の一をイブン・ハーティブ家が所有する」、

と、ルアイイの息子が、カアブ、アーミル、サアマ、アウフの四人であることを意味して、詩を詠んだ。

 カアバ神殿はマッカのワーディー(涸河)の最も低い場所に建てられており、神殿周辺の平地をアルバトハという。ここに定住したクライシュは、最も有力な部族で、クライシュッ・ビターハ(平地のクライシュ)と呼ばれ、神殿から離れた谷間や高地に定住した支族、同盟者は、クライシュッ・ザワーヒル(周辺のクライシュ)と呼ばれた。

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