ナジュラーンのキリスト教の起源(2)
村人の家に着くとファイミユーンは、何をしてほしいかを尋ね、村人は細かい指示を与えた後、突然、子どもにかけていた覆いを取って、「おお、ファイミユーンよ、神の被造物の一つが、見た通りの状態にある。彼のために祈ってくれないか」、と言った。
ファイミユーンが祈ると、その子は立ち上がり、すっかり目は治癒していた。人びとに知られるようになったことを悟った彼は、村を離れ、サーリフも彼に従った。二人がシリアを出て大きな樹の側を通りかかると、その木陰から一人の男が声をかけた。
「私はあなたが来ることを予期し、あなたの声を聞き、それがあなたであることを知った、たった今まで、『彼はいつやって来るのか』、と言い続けてきた。私は間もなく死ぬので、私の墓で祈るまで、どうか行かないでください」。
ほどなくその男は死に、男が埋葬されるまで、ファイミユーンは祈った。それから彼は出発し、サーリフも彼に従った。彼らがアラブの土地に入ると、アラブは彼らを襲い、隊商は彼らをナジュラーンに連れ去り、そこで彼らを奴隷として売った。
そのころナジュラーンの人びとは、ナツメヤシの巨木を崇拝するアラブの宗教に従っていた。彼らは年に一度、手に入れることができるあらゆるきれいな衣装や女性の装身具をその樹に飾る祭りを執り行い、一日中、その周りで大騒ぎした。
ファイミユーンは、ある貴人に、サーリフは、別の貴人に売られた。ファイミユーンが、彼の所有者から割当てられた小屋で夜に熱心にお祈りすると、小屋には光が満ちて、ランプがないのに煌々と輝いた。この光景に驚嘆した所有者は、彼の宗教について尋ねた。
彼は自らの宗教について語り、「ナツメヤシの樹は、助けることも傷つけることもできないので、あなたがたは誤っています。主は比類のない唯一の神です。もし私がその神の御名においてその樹を呪えば、主は樹をお倒しになるでしょう」と言った。
「それならば、やってみるがいい」、と彼の持ち主は言い、「もしお前がそれを証明したならば、我らはお前の信じる宗教を受け入れ、我らの宗教を放棄しよう」、と誓った。ファイミユーンは身を清め、二ラカー※の礼拝を行い、樹を倒す助けを神に祈願した。すると神は、嵐を送って巨木を根元から引きちぎり、大地に横たえてくださった。
こうして、ナジュラーンの人びとはキリスト教に帰依し、彼は人びとをイーサ・イブン・マルヤム〔マリアの息子イエス〕の教えに導いた。それから後、至る所でキリスト教の兄弟たちは災難に見舞われた。これが、アラブの地、ナジュラーンでのキリスト教の起源である。これは、ナジュラーンの人びとを典拠とするワハブ・イブン・ムナッビヒの報告である。
※一回の跪拝に伴う一連の礼拝動作を一つとする礼拝の単位。
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