象と暦調節師の物語(6)
何人かの博識者は、ホナータが使いに来て、アブドゥル・ムッタリブがアブラハに会いに行ったとき、当時のバクル族の族長であるヤアムル・イブン・ヌファーサ・イブン・アディーユ・イブヌッ・ドゥウイル・イブン・バクル・イブン・マナート・イブン・キナーナと、ホザーイル族の族長であるホワイリド・イブン・ワースィラがアブドゥル・ムッタリブと共に同行した、と主張している。それによれば、彼らは、アブラハがカアバを破壊せずに撤退すれば、低地〔ティハーマ〕の牛の三分の一を彼に贈る、と提案したが、彼はこれを拒否したという。そうであったか、そうではなかったか、それは神がご存知である。いずれにせよ、アブラハは、アブドゥル・ムッタリブに、略奪した二百頭のラクダを返した。
アブラハと別れてクライシュのところへ戻ると、アブドゥル・ムッタリブは、彼らに報告し、アブラハの軍の侵攻を警戒して、マッカから退いて、山頂や山道で防御態勢をとるように指令した。アブドゥル・ムッタリブは、カアバの扉の取っ手を握りしめ、クライシュ一族の有力者と共に、アブラハと彼の軍隊からお守りくださるようにと神に懇願して祈り続けた。取っ手を握りしめながら、アブドゥル・ムッタリブは次のように祈った。
「おお、神よ、男は自分の住まいを守ります、主は主の住み家をお守りください。
彼らの十字架と企みが、あしたに、主の御業に打ち勝ちませんように」。
イクリマ・イブン・アーミル・イブン・ハーシム・イブン・アブド・マナーフ・イブン・アブドッ・ダーリ・イブン・クサイイは、次のように詠んだ。
「おお、神よ、アルアスワド・イブン・マクスードに、
首輪を付けたラクダを奪った者に、屈辱を与えたまえ。
ヒラー※とサビールの間で、そして砂漠で、
自由に草をはむべきラクダを閉じ込めて、
黒い蛮族に引き渡した者に、
彼から主の恩寵を取り上げたまえ、おお神よ、
主こそ称賛するにふさわしい御方であられるからには」。
※マッカの北東郊外にある丘の名。神の使徒はここの洞窟にこもっていたとき、啓示を授けられ始めた。
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