2012年6月5日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(29)

ティーバーン・アスアド・アブー・カリブは、いかにしてイエメンを領有し、ヤスリブに遠征したか(4)


 ティバーン・アスアド・アブー・カリブと彼の民は元々、偶像崇拝者であった。彼がイエメンに戻る際の経由地であるマッカに向かい、ウースファーンとアマジの中間に至った頃、ホザーイル・イブン・ムドゥリカ・イブン・イルヤース・イブン・ムダル・イブン・ニザール・イブン・マアッド族の男たちがやってきて、「おお、王よ、これまで、諸王たちが見逃してきた宝の蔵に案内してはいけないのでしょうか。そこには、パール、トパーズ、ルビー、ゴールド、シルバーが埋蔵されています」、と誘った。王が、「いいとも」、と答えると、男たちは、「そこはマッカの人びとが崇拝し、そこで礼拝する神殿である」、と付け加えた。しかし、ホザーイル族の真の狙いは、王を破滅させるわなを仕掛けることだった。彼らは、神殿を侮辱する王は一人残らず死に至ることを知っていたからである。ホザーイル族の申し入れを受け入れた王は、意見を求めるため二人のラビに使いをやって呼びつけた。「ホザーイル族の唯一の狙いは、王様と王様の軍団を壊滅させることです」とラビは答えた。「人びとが神を崇拝して礼拝するために、神がこの地上にお決めになった館とは、私たちはカアバ以外知りません。もし王様が、彼らの誘いに乗じてカアバを冒涜されるならば、王様と軍団は破滅してしまいます」、とラビは語った。「それならば、マッカに着いたとき、どうすればよいのか」、と王が尋ねると、ラビは、「マッカの人びとのやり方に従ってください」、と答えた。それはつまり、カアバの周りを歩いて回り、カアバを崇拝、礼拝し、頭を剃り、カアバの境内を出るまで最大の敬意を払って行動することであった。

 王は、「ではなぜおまえたちは、同じようにしないのか」とラビたちに聞いた。ラビたちは、「カアバは、確かに父祖イブラヒームの神殿ですが、人びとはそこに偶像を配置し、そこで血を流すという耐え難き障害を置いており、その人々は、不浄な多神教徒だからです」、と答えた。ラビの言葉に思慮分別があり、真実であることを理解した王は、ホザーイル族の男たちを呼びつけ、手足を切断し、マッカへの旅を続けた。王は、カアバの周りを歩いて回り、犠牲を供え、頭を剃り、犠牲にした動物の肉と蜂蜜をその地の人びとに与え、伝えられるところによると、六日間その地に滞在した。

0 件のコメント:

コメントを投稿