象と暦調節師の物語(7)
それからアブドゥル・ムッタリブは、カアバの扉の取っ手を放して、アブラハがマッカを占領して何をするかを見張ろうとして、クライシュ一族の仲間たちと一緒に山の頂に登って防御態勢をとった。
朝になってアブラハは、マッカに入る態勢を整え、象に戦闘態勢をとらせ、軍隊を整列させた。
彼は、カアバを破壊した後に、イエメンに帰るつもりであった。マハムードと名付けられた象をマッカの方向に向けたとき、ヌファイル・イブン・ハビーブがすばやく象のそばに駆け寄り、耳をつかんで、「マハムードよ、ひざまずくか、あるいはお前が来たところにすぐに引き返せ、お前は神の聖地にいるからだ」、とささやいた。
耳から手を放すとマハムードはひざまずき、それからヌファイルは、山の上をめざして全速力で走った。戦士たちが立たせようと鞭打ったが、マハムードは立ち上がらなかった。
彼らは、鉄の棒で頭をたたき、かぎ針で下腹を引き裂いたが、無駄だった。彼らがイエメンの方に向けると、象はすぐに立ち上がって動きはじめた。彼らが北に向けても、東に向けても同じように動き始めた。ところが、マッカに向けさせるやいなや、すぐにひざまずいてしまった。
さらに神は、海の方からツバメとムクドリのような鳥を飛ばせ、鳥はみな、豆のような石をくちばしに一つくわえ、爪に二つつかんで、これを彼らの頭上に降らせた。この石に撃たれた者は死んだが、皆が撃たれたわけではなかった。彼らは、われ先に退却しはじめ、ヌファイルに、イエメンに帰る道を案内するように叫んだ。神が彼らに下された天罰を見たとき、ヌファイルは、次のように詠んだ。
「神に追われている者が、どこに逃れようというのか、
アルアシュラムは、征服者ではなく、征服された者である」。
ヌファイルは、付け加えて詠んだ。
「ごきげんよう、ルダイナ、
お前は、今朝、我らの目を楽しませてくれる。
もしお前が見たなら、だがお前は見ることはない、ルダイナよ、
我らが、アルムハッサブ※のそばで見たものを、
お前は私を許し、私の行為を称賛するだろう、
お前は過ぎ去ったことにいらだつことはないだろう。
私は鳥を見たとき、神を称えた、
そして石が我らの頭上に落ちないかと恐れた。
みながヌファイルに頼んでいた、
あたかも私がアビシニア人に借りがあるかように」。
※マッカとミナーの間にある地名。
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