2012年6月6日水曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(34)

ズゥー・ヌワースの支配


 かくして、彼らはズゥー・ヌワースを王とし、ヒムヤルの民とすべてのイエメンの部族が彼を支持した。彼はヒムヤル王国の最後の王で、コーラン中の「坑の住人」の物語で信仰ある人びとを殺害した王とされている。彼はユースフと呼ばれ、長期間、統治した。

 ナジュラーンには、福音書に従って高潔で行いの正しい、預言者イーサ・イブン・マルヤム〔イエス・キリスト〕の宗教に帰依する民がいた。彼らの首長の名は、アブドッラー・イブヌッ・サーミルといった。この宗教が根付いたのがナジュラーンで、そのころ、その地はアラブの国の中心だった。当時は、ナジュラーンの人びとも、ほかのアラブも皆、偶像崇拝者であった。しかし、ファイミユーンという名のキリスト教徒がナジュラーンに定住し、この地の人びとをキリスト教に改宗させたのである。

 ギリシャ語のイユーフェミオンがアラビア語化した名前。東ローマ帝国領、おそらくシリア出身のキリスト教徒と考えられる。

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