2012年6月5日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(24)

イエメン王ラビーア・イブン・ナスルと、二人の占い師、シックとサティーハの物語(2)


 恐るべき託宣に驚愕した王は、それが起きるのは王の時代か、それともその後のことかを確かめた。サティーハは、「六十年あるいは七十年が過ぎた後でありましょう」、と答えた。王はさらに尋ね、サティーハはその問いに答えた。「新来者の王国は、長く続くのか」。「いいえ、七十年後かそれよりのちに、終止符が打たれるでしょう。そして、エチオピア人は、惨殺され、生き残った者は逃亡するでしょう」。「それを実現する者は、誰なのか」。「その者とは、イラム・イブン・ズィー・ヤザンです。彼は、アデンからエチオピア人を駆逐するためにやってきて、エチオピア人たちを一人たりともイエメンに残すことはありません。しかし、彼の王国も長くは続かないでしょう。なぜならば、天上から啓示が真正な預言者に下され、その預言者が王国に終止符を打つからです。預言者は、アンナドゥルの息子のマーリク、その息子のフィフル、その息子のガーリブの子孫です。この預言者とその民たちの統治は、この世の終わりまで続きます」。「いったい、この世には終わりがあるのか」、と王は尋ねた。「この世には、確かに終わりがあります。その終わりの日とは、最初の人間と最後の人間が集められ、善人には幸福な、悪人には不幸な最後の審判が下される日です」、とサティーハは答えた。王はサティーハに、「おまえは、本当のことを言っているのか」、と確認したところ、サティーハは答えた。「黄昏と暗闇、暁と昼光にかけて、私があなたに語ったことは、真実です」。

 遅れてやってきたシックに王は、夢を見たことだけを告げ、二人の託宣が一致するか、それとも食い違うかを確かめるため、サティーハが言ったことをシックには教えなかった。彼は次のように語った。

 「あなたが見た炎は、海の方からやってきました。炎は岩と樹の間を襲い、すべてを焼き尽くしました」。

 二人の託宣が互いに一致し、違いは単に言葉の選択だけであることを理解した王は、シックに、夢の意味をただした。シックは、答えた。

 「溶岩台地の合間にいる、すべての人びとにかけてお誓いします。エチオピア人があなたの地の力ある者たちを倒し、アビヤンからナジュラーンまですべてを支配するでしょう」。

 王は、サティーハのときと同じ質問を繰り返し、彼の支配の後にそれが起きることを知った。

 シックは、答えた。「偉大で強大な人がイエメンの民を解放し、エチオピア人をひどく懲らしめるでしょう。その者は、勇敢かつ高潔な若者で、ズィー・ヤザンの子孫です。そしてエチオピア人は一人たりともイエメンに残ることはないでしょう」。

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