2012年6月12日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(44)

象と暦調節師の物語(2)


 フィラース・イブン・ガンム・イブン・サアラバ・イブン・マーリク・イブン・キナーナ族の、ウマイル・イブン・カイス・ジャズルッ・ティアーンは、暦の調節を自慢して、即興で次のように詠んだ。

 「マアッドは、我らが、最も名誉あり、

高貴な父祖をもっている部族であることを知っている。

 誰が我らの復讐を逃れたというのか、

 我らがいらつかせなかった者がいたというのか。

 我らは、世俗を神聖とする

 マアッドの暦調節師ではないのか」。

 キナーナ族の一人が、コッライスに出向き、そこで排泄行為をして帰った。アブラハはこれを耳にして、この冒涜行為を働いたのは、アラブ族が巡礼に行っているマッカのカアバを所有する一族の者であり、巡礼先をマッカからコッライスに変えようとするアブラハの宣言に怒り、コッライスが崇拝する価値のないことを示そうとしてやったことが分かった。

 激怒したアブラハは、マッカに行ってカアバを破壊することを誓った。アブラハは、アビシニア人に戦争の準備を命令し、準備が整うと、象を一頭連れて進軍を始めた。この知らせはアラブを警戒と不安に陥れた。アブラハが神の神聖な家であるカアバを破壊しようとしていることを知って、彼らは戦うことを決意した。

 ズゥー・ナフルという名の、イエメンの名家の指導者が、彼の一門と、彼に従うアラブ族を集めて、アブラハと戦い、神の神聖な家に対する攻撃と破壊を阻止しようとした。かなりの人数が集まったが、戦闘で彼らは敗走する結果となり、ズゥー・ナフル自身が捕虜となって、アブラハの前に突き出された。アブラハが、彼を殺してしまおうとすると、彼は、自分が死んでしまうより、生きていた方がもっとアブラハの役に立つだろう、と言って助命を懇願した。アブラハは、彼の命を助けたが、彼に足かせをはめて監禁した。アブラハは、情け深い人であった。

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