2012年6月6日水曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(33)

ラフニーア・ズゥー・シャナーティルは、いかにしてイエメンの王権を獲得したか


 王家とは何のゆかりもない、ラフニーア・ヤヌーフ・ズゥー・シャナーティルという名のヒムヤルの民が立ち上がって、指導者たちを皆殺しにし、王族をあからさまに辱めた。これについてあるヒムヤルの民が、次のように詩を詠んでいる。

 「ヒムヤルが息子たちを殺し、王子たちを追放している、

 自らの手で己を恥ずかしめながら、

 現世での繁栄を、愚かな思惑で破壊しつつ。

 それよりもっと重大なことは、彼らの宗教の喪失である。

 昔の民も不正とみだらな行いで滅ぼされた」。

 ラフニーアは、最も邪悪な男だった。彼は男色家であった。彼は、王族の若者に統治させないため、その目的のためだけにこしらえた個室に王族の若者を呼びいれ、辱めていた。そして彼は、目的を果たしたことを示す楊枝を口にくわえて、階上の個室から護衛の兵士たちのところに降りてくるのだった。ある日彼は、ティバーン・アスアドの息子で、ハッサーンの弟であるズルア・ズゥー・ヌワースを呼び入れるため使いを送った。ハッサーンが殺されとき、彼はまだ子どもだったが、すでに容姿端整で、知的な若者に成長していた。使いが何を意味しているかを悟った彼は、鋭利な刃物を靴底に隠し、ラフニーアのもとに出かけて行った。二人だけになるやいなや、ラフニーアが辱めようと襲ってきたので、ズゥー・ヌワースは彼に跳びかかり刺し殺した。それから、ズゥー・ヌワースは、彼の首を切ってそれを、兵士たちを見下ろす窓に置いた。そして、楊枝をくわえて階下に降りて行った。兵士たちが卑わいな言葉で、何があったのか、と尋ねたとき、彼は、「あの首に聞け」、と答えた。彼らが見上げると、そこにはラフニーアの首があった。そこで彼らは、ズゥー・ヌワースを追いかけて、「あなたがあのふしだらな男を、我々から取り払ってくださったからには、あなたこそが我らが王です」、と叫んだ。

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