2012年6月12日火曜日

『預言者ムハンマドの生涯』第一巻(46)

象と暦調節師の物語(4)


 アラートについていえば、それは、ちょうどカアバが崇拝されているように、ターイフの人びとが崇拝していた神殿であった。彼らは、アブー・リガールに、アブラハをマッカまで案内させようとしたが、〔マッカから約三㌔の〕アルムガンミスにまで至るとアブー・リガールは、死んでしまい、アラブは彼の墓に石を投げた。これは、アルムガンミスの人々がいまだに石を投げるお墓である。

 そこからアブラハは、アビシニア人のアルアスワド・イブン・マクスードと何人かの騎兵をマッカに派遣し、イブン・マクスードは、ティハーマ族やそのほかのクライシュ一族の部族からの略奪品をアブラハに送り、そのなかにクライシュ一族の族長であったアブドゥル・ムッタリブ・イブン・ハーシム〔神の使徒の祖父〕が所有する二百頭のラクダが含まれていた。当初、聖地マッカのクライシュ、キナーナ、ホザーイル、ほかの諸部族は、戦闘を企てたが、対抗するだけの戦力を彼らが持っていないことを認識して、この考えを放棄した。

 アラビア半島南西、イエメンより北の紅海沿岸地方をティハーマという。

 アブラハは、その国の一番の名士を探し出し、彼に、王は戦争するためにやって来たのではなく、ただカアバを破壊するためだけに来たのだ、というメッセージを伝えるように命令して、ホナータ・ヒムヤリーをマッカに派遣した。もしマッカの人びとが無抵抗ならば流血の理由は全くない、したがって、もしその名士が戦争を回避しようと望むのならば、ホナータは、彼を連れて戻らねばならない。マッカに着くと、アブドゥル・ムッタリブ・イブン・ハーシム・イブン・アブド・マナーフ・イブン・クサイイが、最も有力な名士であることを知らされたので、ホナータは彼のもとへ行って、アブラハのメッセージを伝えた。アブドゥル・ムッタリブは、「我々は、王に対抗する力を持っていないので、戦いを望んでいないことは、神に誓いましょう。ここはアッラーの聖域で、慈悲深い神の友イブラヒームの神殿である(あるいはその趣旨の言葉を使った)。もし神が王に対抗してそれを守るのならば、それは神の神殿で聖域である。もし神がその力で王の望み通りにさせるのであれば、我々は神殿を守ることができない」、と答えた。ホナータは、彼を連れて戻るように命令されていたため、「そなたは、アブラハ様のもとへ行かなければならない」、と言った。

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