ダウス・ズゥー・サアラバーンと、アビシニアによるイエメン支配の始まり、そしてイエメンの総督となったアルヤートの物語(2)
イブヌ・ズィイバッ・サカフィーも、この出来事について次のように詠んだ。
「汝の命にかけて、死と老いに捕らえられたならば、決して逃れられない。
汝の命にかけて、人には逃げるところがない、避難所はどこにもない、
ヒムヤルの諸部族が災厄の一撃で一朝にして破滅させられたからには、
百万の戦士が槍を雨の前の大空のように輝かせて襲って来たからには。
彼らの雄叫びは突撃者の耳を塞ぎ、刺激的な臭い漂わせて戦士たちを潰走させた。
砂の数のような魔女が近づき樹木の活力を枯渇させるごとくに」。
アムル・イブン・マアディー・カリブッ・ズバイディーは、自分とカイス・イブン・マクシューハ・アルムラーディーとのいさかいの最中で※、カイスが自分を脅す発言をしていたと聞き及んだとき、ヒムヤルの失われた栄光を回想しながら、次のように詠んだ。
「お前は、あたかも絶頂期のズゥー・ルアインか、
あるいはズゥー・ヌワースのように、私を脅すのか。
お前より以前の多くの人びとが繁栄し、
人々の間に堅固な王国を築いた。
アードのような古の時から
猛々しさを乗り越え、暴虐者を征服して、
それでも彼の民は破滅し、
彼は人々の間で放浪者となった」。
※校訂者イブン・ヒシャームによれば、第二代正統カリフ、ウマル・イブヌル・ハッターブは、アルメニアを征服したイスラーム軍に、戦利品の分配で、純血種のアラブ馬を所有する戦士を、混血種を所有する戦士よりも優遇するように指令した。この時、カイスが、アムルの馬を混血と軽蔑したことからいさかいが起きたという。アラブにとり、自分が所属する部族の系譜が純血であること、純血種のアラブ馬を保有することほどの誉れはほかになかった。
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